• 上野邸

    逗子と鎌倉の市境に近い、緑の大変豊かな紅ケ谷と呼ばれる各戸の奥深くに位置し、北に斜面を背貰って、間口が狭く南北の奥行きが深い敷地に建つ住宅である。 鎌倉の風致地区内であることから、外観は日本の伝統的なささら子下見板張り(1階)としっくい塗り(2階)とした。また室内は登楽や丸柱など木構造を意匠として見せるデザインとしている。 屋根は、多量の落葉への配慮と敷地の奥行きの深さから大らかで単純な切妻屋根とし、2階諸室はその屋根勾配を生かした空間としている。 間口の一番広い道路側には2層攻抜の居間を配置し、屋根勾配なりの登楽と母屋による格子天井、また南北に設けた高窓によりこの家の中心となる明るい空間を生み出した。隣家のプライバシー確保を考えて玄関を南側にとらざるを得なかったが、この高窓によって、充分な光と敷地南側の谷戸の斜面の線を堪能できるように配慮した。 また居間の北側吹抜の2階は趣味の絵画制作のアトリエとし、I階居間がファミリーコンサートの場となる際には2階桟敷席のように使われることも想定されている。 北側斜面の樹林から吹き下ろす涼しい風を北側開口部より建物内に取り入れ、廊下等を介して建物全体に流れるように計画している。また谷戸特有の湿気に対応して、基礎は全面に防湿コンクリートを打ち、ネコ土台による基礎全面からの換気を行っている。 その他、金属屋根の十分な空気層や、壁断熱材、ペアガラスのホサッシの採用により高い断熱性能も備えた。
  • 富田邸(京の町屋)

    敷地は京都市の、かつて町屋が建ち並び今もその面影を残す通りに面し、奥行きの深い敷地である。母親および2 人の娘の家族のための3つの住居と、4台分の駐車場とが求められた。 敷地の置かれた文脈に応答しつつ現代の生活にふさわしく環境のよい住居の集合体を構想した。 幸いに容積率を伝統的町屋の120 ~150%に近いものに抑えることが出来たが、法定では400%となっており、このまま放置すれば典型的な町屋地区であったこの地域は伝統的な都市構成を全く失ってしまうだろう。 敷地の南半分に取られたオープンスペースは、各住戸へのアプローチ通路・駐車場・植栽スペースであり、また客室に南からの陽光を提供する。 ファサードは、各階ごとに小庇を取り付けることで外壁の保護と伝統的な街並みとの連続性を強調し、屋根は周辺の町屋と勾配・色を揃え伝統的な屋根主に馴染ませた。 一方内壁,天井は白ペンキ塗装とし、南側に開口部を大きく取り、高窓を設け、明るく風通しのよい内部空間とした。 南側の塀拾いにはカシを列植し、客室から緑が楽しめるようにした。1 階は母親の住居と娘家族の住居へのエントランス、2階と3階は娘家族の住居である。
  • 逗子三角窓のアトリエ

    逗子の海岸通り沿いの敷地には明治期の和風母屋と十年程前に増築きれた洋風家族室(逗子新宿の家)が建っているが、この小さなアトリエはその離れとして計画された。 構造は地階のみ鉄筋コンクリートで地上階は木造の計四層の建物である。地階の車庫は敷地地盤面が高いため前面道路と同一レベルである。 外観は道路に治って隣接する家族室との連続性を考慮して、外壁材料と色、軒高、壁面線をそろえた。また最も特徴的なのはほとんどの開口部が木製三角窓であることで、これらは赤、黄、青で縁どりされている。 内部は三角窓から入ってくる光であふれた明るい空間になっている。サンルーム的な玄関から屋根裏までをつなぐ吹抜けは、内部空間に一体感を与えている。屋根裏にのぽり障子を開けると三つのトップライト越しに逗子湾が見え、晴れた日には速く富士山を望むことができる。
  • 遠藤邸(浦賀の家)

    敷地は浦賀ドックを取り囲むように並び立つ岡野来た斜面にある。周囲の家が一般的に採用している東西軸に平行な配置とすると、南側の狭い庭の前面に、前の家の北壁面がそそり立つことになる。そこで家の南側のファサードを45度東に振り、視線を道路の方向にそらせ誘導することによって、心理的に道路幅員分を自分の敷地に加えるような配置とした。 日常最も太陽の欲しい居間、食堂、厨房を2階としたが、これは2階をほとんど1室空間として扱うことを構造的にも整合させることになった。(第27回神奈川県建築コンクール優秀賞、1982年)
  • 菅田邸(逗子山の根の家)

    建物は南北方向の中央部に、内部と外部、1階と2階をつなぐ中間領域としての吹抜けのサンルームをもち、この軸によって東西にシンメトリーな構成となっている。個室にトップライトからの光を入れるため、中央部は谷屋根として、軸線を強調した形とした。 1階はパブリックな空間であり、軸空間によって西側に居間、東側に食堂、厨房と分けられている、2階はプライベートな空間とし、西側に夫婦の寝室、東側に子供の寝室を、それぞれが独立性を確保するように分断配置した。 居間はレンガ積みの暖炉を壁面の飾り棚に組み込んで低い水平線を強調し、ゆったりとした空間とした。台所は壁面や家具を白で統一し、出窓を設けてできるだけ明るく、清潔な感じに仕上げている。(第25回神奈川県建築コンクール優秀賞、1980年)